【結】


エジプト考古学博物館
結1

カイロ博物館とも呼ばれ、エジプト全土から出土した膨大な数の秘宝が納められている。博物館周囲の警備は驚くほど厳重で、銃を持った兵士がうろうろしているし、中に入る前には空港にあるような金属探知機をくぐらされるし、係員によるボディーチェックも2回受けさせられた。何としても国の宝を守るという姿勢がうかがえる。

内部はあまり整理されてなくて物置みたいな感じだが、石像や石棺、木製の小船、そしてミイラ入れ(?)のような物が多数陳列してあってエジプト史の底深さを感じる。石棺の周囲のヒエログリフや絵には4500年前の人々が既に石臼や杵を使っている様子が生き生きと描かれていた。石臼は二段になっていて上にはちゃんと回す為の棒が付いている。要するに今の石臼と全く変わらないのだ。

2Fの特別室にはツタンカーメンの黄金のマスクが陳列してある。保存の為か薄暗く乾燥した部屋になっている。写真はNo FlashならOKと書いてあったので外国人旅行客の少年に頼んで撮ってもらったのだが、現像したら何故か写ってない。ひょっとしてツタンカーメンの呪いかも!?


バス
結2

この写真はカイロ市内のバスターミナルであるタフリール広場で撮ったもの。分かりにくいがフロントガラスの左下(ワイパーの真上)に正方形の白い紙が置いてあるのが見える。ここにバスの行き先番号が3桁のアラビア数字(アラブ世界のミミズが這ったような数字)で書いてあり、読み取るのに苦労する。バスにも色んな種類があって、空港行きのバスはエアコン付きで比較的豪華なので料金もそれなりに高い(3ポンド=約100円)が、市内を走る通常のバスは25ピアストル(約8円)か50ピアストル(約15円)なので信じられないほど安い。

大抵の日本人ツアー客は貸切バスを利用するので、こういう市内バスに乗る事は滅多にないらしい。実際、今回の旅行中何度もバスに乗ったが車内で日本人と会った事は一度もなかった。そういう訳でエジプシャンにとっても市内バスに日本人が乗ってくるのは珍しいらしく、必ずと云っていいほど声を掛けられる。

ある時ギザ広場に向かうバスに乗ったらちょうど中学生の下校時刻と重なったようで、5-6人くらいの中学生に囲まれて話し掛けられた。珍しい日本人に興味津々といった様子で、エジプトの教科書を見せてくれたりノートに漢字で名前を書いてくれとせがまれたりした。ほとんどの子はあまり英語が上手くなかったが、そのうちの1人はとても上手くて将来有望に感じた。その子とは別の少年に「どこに行くの?」と尋ねられたので「タフリール」と答えたら、ギザ広場で乗り換えのバスを探してくれると云う。1人で探すのは大変なので助かった。

でも実はその少年もよく分かってなかったみたいであちこち引き回されたが、一生懸命探してくれたので本当に有難かった。歩きながら「将来何になりたいか?」と聞いたら「医者になりたい」と答えた。どうにかバスが見つかり、「将来お金を貯めて日本に遊びにおいで」と云って握手して別れた。バスが出発するまで手を振って送ってくれた少年の笑顔が今でも思い出される。もしかしたらピラミッドよりもこういう出会いの方が一番の思い出かもしれない。


数字

何度かアラビア数字の話題が出ているので具体的に紹介すると、下のようなフィギュアである。左から0123456789の順になっている。1と9だけ似てるけど後は似ても似つかない。エジプトではバスの行き先番号もエレベーターのボタンも商品の値札も電話番号も、ぜーんぶこの数字。覚えて行かないと不便!

アラビア数字


食事

エジプトで一番メジャーな軽食はやっぱり「コシャリ」。これはライスとマカロニを混ぜたものにレンズ豆やターレーヤをトッピングして食べる。ターレーヤとは赤っぽいオニオンフライの事で、喩えて云えばうどんに載せるかきあげみたいな食感でサクサクして美味しい。でもエジプトで一番オススメなのは街中のあちこちにあるジューススタンドで、特にイチゴジュースは超が付く絶品。注文すると大きめのグラスにイチゴをぎりぎりまで入れ、その上からよく冷えたイチゴジュースを掛けてくれる。フォークを渡されるのでイチゴを食べつつジュースを飲むのだが、これが本当に美味しいの何のって。あー、また飲みたくなってきた(笑)


英語

エジプトはアラブ世界なので公用語はアラビア語。よって英語はアラビア訛りがきつくて聞き取れない事もしばしばある。独特な発音も多い。喩えばパピプペポがバビブベボになるので「ピラミッド」が「ベラメッド」になったり「ジャパン」が「ジャバン」になったりする。


イスラム教

エジプトはアラブ世界なので基本的にはイスラム教国。街のあちこちにスピーカーがあるらしく、決まった時間になると街中にコーランの祈り(よく分からないけど多分そう)の重低音が響き渡る。ホテルの自室にいても聞こえるほどの大音量なので、うるさいと云えばうるさいけど如何にもアラブっぽくて異国情緒たっぷり。コーランはテープにもなっていて、タクシーやマイクロバスの運ちゃんはたまに聴きながら運転してる。


値段交渉

エジプトではタクシーの料金もお土産の値段も全部交渉の上で決まる。そのコツを伝授しよう。とにかくまず最初は100%吹っかけてくる。最終的な値段の3倍4倍5倍6倍は当たり前。でもこっちが黙ったり気のなさそうな態度をしているとすぐ値段を下げてくる。ここから勝負開始。まず自分の中で最終的な落し所の値段を決める。勿論極端に低過ぎても交渉が成立しないだろうから、相場を考えて現実的な値段を設定する。こういう交渉では弱味を見せたら最後なので、徹底的に最初に決めた値段を主張し続ける。引いたらダメ。

そうこうするうちに向こうが徐々に値を下げて、こちらの値段より若干高いくらいの値段を云ってくる。妥協してもいいかな、と思ったら日本から持ち込んだライターかボールペンをちらつかせる。しかしこれはあくまでも布石で、おそらく相手は乗ってこないので更にしばらく交渉を続ける。ここで一気に決める! 交渉がヒートアップしてきた所で突然「もうダメだ、埒が明かない」という呆れた素振りを見せて背中を見せて帰りかけるのだ。そうすると相手は慌てて必ず引き止め、こちらの主張する値段で折り合ってくれる。今回の旅行中の交渉は大体この手で上手くいった。ライターまたはボールペンは交渉成立後にプレゼントすると喜んでくれる(実話)

あとエジプトでは日本とは比較にならないほど物価が安いので、吹っかけられてもついつい「このくらいだったら日本円で考えても大した事ないから払っちゃおうか」と思ってしまいがちだが、一部の人がこういう成金根性を振りまいてると日本人全体が甘く見られて後からエジプトに来る貧乏旅行者が苦労するハメになる。あまり簡単に妥協しないようにしましょう。


終わりに

昔から「古いもの」が好きだった。それも何百年何千年の歴史有るものが。人は死んでも形は残る。造ったものは残る。ギザのピラミッドを造った4500年前の無数の人々は名前すら残っていない。造らせたファラオも跡形もない。人は死ぬ、人は亡ぶ。しかし人の造ったものは残る。時を経て残っているものは、かつてそれを造った人や造らせた人が確かにそこにいた事を教えてくれる。ピラミッドは独りでにはできない。ピラミッドの石を触る時、4500年前にその石をそこに運んだ人が確かにいた事を知る。その石をそこに運ばせた人がいた事も知る。その運ばせた人はうず高く積まれた石の山の中に眠る人だ。

そしてピラミッドを眺める時、4500年の間に無数の人々が同じようにピラミッドを眺めてきた事を知る。ある時は後代のファラオが先王を偲んで眺め、ある時はアレキサンダー大王の遠征に従軍したギリシャ人兵士が眺め、ある時はナポレオンに派遣された考古学者がピラミッドの謎を解き明かさんと眺めた。そして今21世紀の自分が眺める。そそり立つ3つのピラミッドを眺めながら巡る周囲の道、その道は4500年の間に無数の人々がそぞろ歩いた同じ道だ。

ピラミッドに触りながら眺めながら想像する。4500年前の炎天下に黙々と石を運び上げた営為を想像する。ファラオが神だった時代を想像する。ファラオがとてつもなく強大な権力を持っていた時代、その時代の人々は世界をどんな風に考えていただろう。宇宙の構造をどんな風に考えていただろう。死後の世界をどんな風に考えていただろう。きっと21世紀の我々よりも豊かな想像力を持っていたに違いない。我々には見えないものを見る事ができたに違いない。文明の進歩は人類に多大な貢献をもたらした。しかし同時に自然と一体化したかけがえのない感性を奪い去った。現代の我々にはもはやピラミッドのような人類の能力と可能性の極限を結晶させた遺産を造る事はできない。

4500年の間にピラミッドを眺めた人々。紀元前の人々はどんな事を想像しながら眺めただろう。ローマ帝国の人々は、中世の人々は、近代の人々は・・・それぞれどんな事を想像しながら眺めただろう。眺めた人は亡ぶ、しかしピラミッドは滅ばない。夜明けの光を何万回と浴びながら、ピラミッドはいつも厳然とそびえていた。ピラミッドをよすがとして現代の我々は古今の人類と1つにつながる事ができる。ピラミッドを眺める時、我々はこのちっぽけな自分が壮大な人類史の大河の流れの中に生きている事を自覚する。

もしこういう「古いもの」が地球になかったとしたら、我々はきっと過去の人類とつながっている事に無自覚なままだろう。それはとても寂しい事だ。何故なら今が過去とつながっていないとすれば、即ち今が未来にもつながらない事を意味するから。そうではなく、どの時代に生きた人も人類史という長い長い1本の鎖に結ばれている事を自覚させてくれる、そんな「古いもの」が自分は大好きだ。


(もどる)
目次
とっぷぺえじ