London編(part2)
本当は7:50発のバスに乗る予定があまりの眠さに起きられず、寝坊してしまった(苦笑) 結局時間を節約する為に鉄道で行く事にした。Porter's Lodge(各Collegeの正門横にある守衛所みたいなもの)に行って時刻表を調べたら、9:25発に何とか乗れそうだ。駅まで歩いて30分近くかかるのだが、急ぎ足(+小走り)で向かった。
25/Jul/99 (Sun) 晴のち曇
9:15頃着いてやれやれ間に合ったと思っていたら、何と窓口に切符を求める長蛇の列が! 今から並んでいたのでは到底間に合わない。これはマズイと思って辺りを見回すと自動券売機があった。よく考えたらあって当然なのだが、どうも「欧米の鉄道」=「切符は窓口で買うもの」という固定観念があったようだ。券売機ではまず切符の種類(Day Return)を押し、次いで行き先(London)を押し、最後にお金を入れる。分かっていたつもりなのについお金を先に入れてしまった。習慣って恐ろしい。
ちなみにDay Returnは£13.50で、昨夜バスを乗り逃して買ったDay Singleは£13.40。往復と片道がほとんど変わらない。これは鉄道に限らずバスでも同じで、Returnが£8でSingleが£7。これだけ差額が小さかったらいやでも往復にせざるを得ない。でもこれだと儲けが少ないような気がするんだけど(それとも片道料金がボッタクリ?)。
London着。昨夜はあった車内での検札が今日は一度もなかった。改札も無いのだから、結局一度も切符を見せてない事になる。随分いい加減だなぁと思った。さてお腹がすいていたので駅内のBurger Kingでチーズバーガーセット(£3.89)を買う。ファーストフードなのにこの値段は日本より高いぞ。ベンチを探したが無かったので、ホームに入線してくる列車を眺めながら柱に寄りかかって食べる。
King's Cross Station
まずは衛兵交代を観る為にBuckingham宮殿に向かう。地下鉄Piccadilly線でGreen Park駅まで。駅のエスカレーターには"Stand On The Right"と表示してあるのだが、つい日本の習慣で無意識に左側に立ってしまう。前の人が右側に立っているのに気付き、慌てて右に移動するという事が何度もあった。
Green Park
余談だが東京では左に立って関西では右に立つという有名な話がある。江戸時代に武士は大小を左腰に差しており、それが他の侍の大小と触れ合って余計ないざこざが起きないよう、武士の町である江戸では左側通行が原則になっていた。それで今でも東京では左側に立つのだ、という話を聞いた事があるが本当だろうか。ちなみに福岡も左側。
バーガーのゴミを始末したかったがどこにもゴミ箱が見当たらない。最近Londonでは爆弾テロとかが物騒なので、交通機関には警戒して置かないようにしているのだろうか。
駅から宮殿までGreen Parkを通って歩く。そのあふれる緑は寝不足で疲れた目に優しく映る。同じ方向に歩いている観光客もやはり衛兵交代が目的なのだろう。
The Changing of The Guards
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遠くからでもすごい人だかりが見えたので、Buckingham宮殿の場所はすぐ分かった。時間的には遅い方だったので、宮殿の柵沿いの特等地(?)は既に人で埋まっていた。それで柵の前は諦めて噴水の前にポジショニングし、隊列を待つ事にした。それにしても日曜という事もあってか、辺り一帯はすごい人・人・人。誇張でなく世界中から集まっているようだったが、どこの国の観光客もSONYのビデオカメラを携えているのには苦笑してしまった。
11:30に衛兵団が鼓笛隊に先導されてやって来た。赤い制服を着て黒いBearskinを頭にかぶっているおなじみのスタイルで、子供の頃に見た「おもちゃの兵隊さん」そっくり。彼らは柵内に入って行き、宮殿の前庭で何か儀式らしき事をしているようだがよく見えない。後はひたすら待つ。その間、パレードの予定コースをちょろちょろと横切る観光客がいると、騎馬にまたがった女性警官が笛を吹いて注意する。
炎天下で30分も待たされるとさすがにこたえるなぁと思い始めた12:00頃、ようやく隊列が柵の外に出て来た。彼らがちょうど噴水の前に来たタイミングを見計らってシャッターを切る。待った甲斐があった〜。兵士達は歩きながら何分かおきに銃剣を左右の手に持ち替えるのだが、その際の機敏な動きが格好いい。
折角だからAdmiralty Arch(海軍門)まで後ろをついて行くことにした。周りを見ると、同じ事を考えたのか大勢の観光客がぞろぞろとついて歩いている。ところが隊列は海軍門まで行かずに途中で左に折れ、小広場に整列した。この小広場は三方を壁に囲まれており、通りに面した所だけ壁が切れている。その奥の壁にはFAIARY COVRTと記してある。ここでまた何やら儀式めいた事をして兵隊達は奥に消えて行った。
近くにいたお巡りさんにCOVRTとはどういう意味なのか尋ねたら、VはOld EnglishでUの事だと云う。昔は通りに面した所にも壁があったのでCOURT、すなわち内庭と呼ばれていたんだよと親切に教えてくれた。なるほど、それで合点がいった。ついでにここは衛兵のofficeなのかと尋ねたら、いや宮殿の一部だと答えてくれた。いい人だ。
The Mallは海軍門からBuckingham宮殿に至る道の名前。いわば王室のメインストリートだ。道の左右にはSt.James's Palace、Carlton House Terrace、Clarence House等の王室所有の棟々が建ち並び、また道に沿ってSt.James's Parkの緑が広がっている。ここを歩いていると空気にまでほのかな高貴さが漂っているかのように感じる。海軍門を指してまっすぐ歩く。
The Mall
海軍門。宮殿の真正面にある壮大堅固な門で、宮殿側に向かってやや湾曲している。交通の要衝であるTrafalgar広場にほとんど隣接しているので、門の付近は車の洪水が絶えない。海軍門を通して宮殿を眺めるのは、いわば皇居の二重橋前から富士見櫓を見上げるようなもの!?
Admiralty Arch
Trafalgar Square
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海軍門を抜けるとすぐ左にある。広場の中央にとても高いNelson's Column(Nelson提督記念柱)が立っており、その台座の四隅に4頭のライオン像が鎮座している。ライオン像は想像していたよりもずっと大きくて堂々としていた。
うわさの通り鳩が多い。黙々と餌をまき続ける青年がいる。鳩が靴をつついても一向気にせぬ風に佇む老人がいる。ライオン像にまたがる少年がいる。今日はLondoner達にとってのごく普通の休日でもあるのだ。我々旅人はLondonを一瞬通過するだけだが、その一瞬をかけがえの無いものと考える。しかしここに生まれここに育つ人々にとっては今日もごくありふれた一日なのだろう。
広場の背後にはNational GalleryやNational Portrait Galleryが並ぶが、絵画にはあまり興味が無いのでパス。時間の関係上Piccadilly CircusのEros像を見るのは諦め、バスでKensington宮殿に向かう事にする。地図を見ると9番のバスらしかった。でもどこから乗ったらいいんだろう?と思っていたら、ご丁寧にもCharingcross付近のバス停一覧図があった。この一帯は交通の要衝で多数の路線が交錯するので、一覧図が必要なほどたくさんのバス停があるのだ。
Kensington Palace
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広大なHyde Parkに隣接しているこれまた広大なKensington Gardensを抜け、宮殿へ。ここはいわずと知れた故Princess Dianaがかつて住んでいた所。入場料は学生料金で£6.70。
外から見られるのを防ぐ為か、1階の窓は全てカーテンやスクリーンで遮られているのでほの暗い雰囲気。Diana妃が実際に使用していたかどうかは分からないが、宮殿所有の椅子やテーブル等の調度品、それに王室・貴族が華やかなりし頃の宮廷衣装や夜会服がこれでもか!と云わんばかりに陳列してある。London塔のJewel Houseでもそうだったが、ここでも英王室や貴族の生活の豪華さやきらびやかさにただため息が洩れるばかり。
白眉を挙げるとすれば、やはりCoronation Robes。これは1911年6月22日にGeorgeX世とQueen Maryが戴冠式を挙げた際に使用されたものだという。濃紺を基調としていて、裾は際限なく長い。彼らがこれを着て歩く際、侍従が裾の端を懸命に持ち上げながらついて行く様子が目に浮かぶ。
2階はKing's ApartmentとQueen's Apartmentになっている。ほとんどの部屋に鮮やかな装飾画が描かれており、また壁には天井知らずの価値であろうタペストリーが多数掛けられている。Presence Chamber(謁見室)とPrivy Chamber(枢密室)の装飾も良かったが、最も推したいのがCupola Room(円天井室)。中央にはかつてHandelの名曲を奏でたというオルゴール時計が置かれ、周囲の壁には大理石の柱の間に金箔の神々の立像が等間隔に置かれている。こんな絢爛極まりない部屋も、ここでは数ある部屋の一つに過ぎないのだ。
王の寝室と女王の寝室にはそれぞれ天蓋付きの巨大なベッドが置かれていた。天蓋付きのベッドなんて漫画か映画の中でしか見た事がなかったが、初めて実物を見た。ひと晩でいいから寝てみたい(笑)
意外と云うべきかやはりと云うべきか、Diana妃に関する展示などは全く無かった。かつては英王室を代表して世界を駆けたDiana妃も、今は逆に王室史から抹殺されようとしている。運命の波に翻弄され続けたDiana妃。非業の死を遂げたとはいえ、普通の女性として平凡に生きた場合とどちらが幸福だったか 、それは誰にも断定できない。
British Museum
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地下鉄Queensway駅からCentral線に乗ってTottenham Court Road駅下車。少し歩くとパルテノン神殿風の大英博物館が見えてくる。入場無料だが£2以上の寄付を募っており、館内のあちこちに募金箱(?)が置いてある。
じっくり見て回るには1週間必要という所を2時間半ほどで回るのだから、必然的に興味のある所だけ重点的に見るという風になる。でもQ大生の中には10分だけ見て回ったという人もいれば、閉館寸前に入って入口脇の銅像だけ見たという猛者(?)もいるので、2時間半って多い方なのでは。
2大メジャー展示ともいえるミイラとRosetta Stoneは外せなかった。ミイラの側には内部をX線撮影した写真も置いてある。棺の覆いを外すのはさすがに死者に失礼と考えてレントゲンにしたのだろうが、これでも充分失礼なんじゃないかという気がする(笑) でもそうまでして中を見ようという執念は見上げたもの。
ミイラの側には手足を屈曲させて埋葬された人骨が展示してあった。職業柄、自然と視線は歯の方に行く。歯牙はほとんど抜けておらず残存しており、かえって人工ではないかと疑ったが、歯槽骨への釘植具合から判断しておそらく天然歯だろう。数えてみると第3大臼歯(親知らず)が上下顎ともほぼ完全な形で生えている。現代人は軟らかい食事ばかり摂るので第3大臼歯は退化傾向にあるのだが、きっとこの時代の人には必要欠くべからざるものだったのだろう。
その近くに2世紀頃の頭蓋骨と顔面の復元模型があり、"Painted lime plaster mask and skull of a man"と題してあった。解説には"The skull is that of a mature adult, with moderately worn teeth. X-ray have revealed some erosion on the palate, which may be the result of disease."(この頭蓋骨は適度に摩耗した歯を持つ成人のものである。X線により、病気が原因で起こった口蓋の腐食が明らかになった)とある。「病気が原因で」とあるので先天的な口蓋裂ではなさそう。では慢性の潰瘍性炎だろうか? 機会があったら病理のS教授に尋ねてみよう。
Sargon神殿にあったという紀元前2100年前の"The pair of humanheaded winged bulls"も印象的だった。これは翼を持つ一対の巨大な人面獣身像で、高さは3m以上ある。現代の我々が見ても畏敬の念を起こさずにはいられないのに、いわんや4000年前の人々にとってをや。4000年前の神殿を想像してみる。静寂と暗闇の中、入口の両脇にはこの巨像が人間を睥睨するかのように立っている。それは見る者をしてある種の恐怖心を抱かしめたに違いない。恐怖は「恐れ」と「怖れ」から成り、これらは「畏れ」に転ずる。畏怖の念は信仰心の源である。こうしてこの巨像は神殿を絶対化する触媒となる。
続いて5階にあるJapanese Galleries(日本館)へ。ここには主に能面や茶の湯の道具が展示してある。能は大好きなので実に興味深かった。
それらの中に狩野玉円永信作の『道成寺』の絵巻があった。『道成寺』のクライマックスで嫉妬に狂う白拍子が吊り鐘の中に飛び込む「鐘入り」というシーンがあるが、それは"She dances closer and finally slips under the bell."と説明されていた。その鐘が引き上げられると白拍子は般若と化し、最後は僧侶によって成仏させられるが、それは"The bell is raised to reveal the dancer changed into a devil woman, who is pacified by the priest prayers."となっている。的確に訳されている事に思わず感心した。
更に月岡耕漁作による『通小町』の絵図もあった。これは自分のハンドルネームにしているだけに興味津々。『通小町』はごく簡単にいえば深草の少将が小野小町に恋して百夜通いをするという話なのだが、それは"Kayoi Komachi (Nightly Visits to Komachi) is an ancient play of the 'dream phantom' (mugen) type."と説明されていた。『通小町』は複式夢幻能に分類されるが、その夢幻能を"dream phantom"と訳した点が秀逸。ただこれを読む欧米人がどれだけ理解できるかは不安だが・・・
大英博物館はなかなか楽しめた。本当はもう少し時間が取れたら良かったんだけど。でも誰にとっても全てを見尽くすというのは不可能だと思うので、やはり的を絞って見るのがいいと思う。
あと、日本から修学旅行生も来ていた。しかも全員制服で。日本にいると特に意識しないけど、海外にいると制服ってものすごい違和感がある。海外での修学旅行ぐらい私服でいいと思うんだけどなぁ。
大英博物館から"Foyles"を探しにCharing Cross Roadに向かった。"Foyles"は在庫数世界一を誇る英国最大の書店で、この道沿いは東京の神田神保町のような大書店街になっている。ちょっと迷いかけたが、何とか見付る事ができた。
Charing Cross Road
が、閉店。日曜だからか? 困ったなぁと思っていたら向かいに"Books etc."という書店があったのでそこに入った。お目当ては「海外版地球の歩き方 日本編」。というのも「地球の歩き方」は実によくできた本で、この渡英中とても重宝していたので、じゃあ逆に海外のガイドブックでは日本はどう紹介されているんだろう?と興味を持ったから。
旅行コーナーのAsiaの棚を探す。日本ガイドは想像以上にたくさんあってどれにしようか迷う。他の地域の棚も見て比較すると、どうやらLonely Planet社のとInsights Guide社のが2大メジャー旅行ガイドで、日本でいう「地球の歩き方」のようだ。散々見比べた末にLonely Planet社のを買った。理由は物価の所に"Japan is a very expensive place to travel."と正直に書いてあったのが気に入ったから(笑)
読んでみると一般の日本人が読む事は想定していないようで、色々と正直に書いてあって楽しい。特に「日本の家では靴を脱ぐ」事と「日本の風呂には身体を洗ってから入る」事がしつこいぐらい何度も書いてある(笑)
London紀行のトリ、Hyde Parkに向かう。地下鉄でも行けるがCentral線をそのまま逆行する事になるのでつまらないと思い、バス路線を探す。どうやら10番のバスで行けるようだ。バス停で待っていると"#73 Marble Arch"と表示されたバスがやって来た。ん? 待てよ?と思い慌てて地図を見ると、Marble ArchがあるのはHyde Parkの角。これに乗っても行けると思い急いで飛び乗った。
Marble Arch
白亜の大理石が美しいMarble Arch前で下車。夕食時だったので公園の周囲でテイクアウトできるFish & Chipsを探すが、いくら探しても見当たらないので"The Hanging Tree"というレストランに入る。Londonで本格的なFish & Chipsを食べるのも夢の一つだった。Londonの食事はまずいと聞いていたが、充分満足できる味だった(まぁこれは自分が味にこだわらないタイプだからかも知れないが)。 店内は生演奏もあっていい雰囲気。
口直しに公園横のアイスクリーム屋さんでアイスを買い、公園内へ。Marble Archの側には有名なSpeaker's Cornerがある。ここでは誰もが自由に自分の意見を述べていい。演説するのは一人だけかと思っていたら、あちこちに人垣ができている。ある人は大きな星条旗を掲げながら熱弁をふるっている。ある演説者はひげを伸ばした回教徒で、中東系の人々がじっと聴き入っている。Speaker's Cornerには英国の民主主義と人種の坩堝の両面が凝縮されている。
Hyde Park
その後はベンチに座ってぼーっと過ごす。今回の渡英では「ぼーっとする時間を持つ」というのがテーマだった(笑) Hyde Parkはとにかく広大な芝生で、Londonっ子の憩いの場と呼ばれている理由がよく分かる。陽が高いので、20:00を過ぎても全然明るい。天気は良好、眺めは最高、気温は快適、時折吹く風も心地いい、で正に至福のひととき。
19:30〜20:30まで1時間ほどぼーっとした後、Marble Arch駅から地下鉄Central線に乗る。途中Oxford Circus駅でVictoria線に乗り換えた。Central線ではあった停車駅案内が、この線では無かった。どうやら路線によってサービスが違うらしい。King's Cross駅でCambridge行きの国鉄に乗り換える。
King's Cross Station
Cambridge駅に着いてからPembroke Collegeに歩いて帰る途中、けたたましいサイレン音を鳴らす車が近付いてくるので英国版暴走族かと思ったら、パトカーだった(爆) いや、あんな派手な音を鳴らすとは知らなかった。
College着。日本を出国してから今までの1週間で使ったお金を計算したら、約£140だった。28000円ぐらい。2回London往復して、あれだけあちこち入って、買い物もして、しかもCambridgeでは観劇もしたのにそんな程度かと驚いた。この調子なら小遣いは充分保ちそう。
明日は9:00から授業なのに予習が済んでない・・・
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